カンボジアだより
2010年08月20日
こんにちは、長島です。シーライツは、ベトナムとの国境に位置するスバイリエン州で現地パートナー団体HCCと共に、子どもの人身売買・児童労働防止プロジェクトを実施しています。ベトナムに隣接したチャントリア郡で、今年度は新たに4つの地域を活動地として選びました。先週、今年結成した収入向上支援家庭からなる自助グループを訪問してきたので、みなさんにご紹介したいと思います。
スバリエン州では、特に農閑期に生計手段を求めて多くの人がベトナムや国内の都市部に出稼ぎに行きます。出稼ぎには、仕事を紹介してくれた人からだまされたり、労働搾取・性的搾取の被害にあってしまうという危険がともないます。子どもも親の出稼ぎに同伴したり、家計を助けるために、働きに出されたりすることで教育の機会が奪われ、児童労働や人身売買の被害にあうリスクにさらされています。新しい事業地である4つの地域は、ベトナムに出稼ぎに行き、カンボジアへ送還されてくる子どもの数が多い地域です。
それらの被害を防止し、子どもたちが学校に通い続けることができるように、シーライツは、1)子どもの権利、児童労働、人身売買などについての啓発活動、2)貧困家庭への収入向上支援、3)通学支援を実施しています。
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自助グループメンバーとシーライツの会合のようす。
今年度は各コミューンに10家庭、計40家庭(合計241人)を新たな収入向上支援の対象家庭として選定しました。支援家庭の選定基準は、1)低収入、2)子ども(特に娘)の数が多い、3)通学中の娘がいる、4)牛を含む家畜がいない(または少ない)、5)家屋の状態が悪いなどです。なぜ娘かというと、カンボジアでは特に娘が家計を助けるという文化的背景があり、学年があがるにつれ、女子の退学率が男子に比べて高くなるからです。
対象家庭には、牛や野菜の種が支給され、牛の飼育や農業・野菜栽培に関する研修を実施して収入向上を支援します。対象家庭は、10家庭からなる自助グループを結成し、グループごとに支給されたかんがいポンプを一緒に使い、野菜を栽培し、貯蓄組合も運営します。
貯蓄組合は、メンバーから投票で選ばれたグループリーダー、会計係が中心になって運営を行います。グループによって異なりますが、だいたい、各メンバーが毎月5,000リエル(120円程)を貯蓄し、貯まったお金はメンバーが2%の利率で、無担保で借りることができます。対象地域には、マイクロクレジットの銀行がいくつかありますが、そこでお金を借りるためには土地などの担保が必要であり、利率は約3%。返済が遅れた場合の罰金は1日につき8,000リエル位(180円程)とわりと高額です。メンバーは、食べるお米がなくなったとき、家族や家畜が病気になったとき、肥料を買うときなどに、自分たちの貯蓄組合からお金を借りたいと話してくれました。
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自助グループメンバーとHCCスタッフ。赤いシャツを着た女性がグループリーダーです。
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支給された牛と、自助グループの家庭
牛は支給するだけでなく、2頭目の子牛が生まれたら、その子牛を母牛と共に返してもらい、1頭目の子牛だけをそのまま飼ってもらいます。牛は耕作の手伝いをして労働力となったり、生まれた子牛を売ることで収入向上につながります。今まで牛を飼ったことがないという自助グループメンバーは、研修で牛の飼育方法を学んだと嬉しそうに話してくれました。
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右の男性がグループリーダーです。
さて、これからは化学肥料を使わずに市場で売れる野菜の栽培方法や、堆肥の作り方などの農業研修が始まります。新しい事業地の、2の地域では地下水の水質が悪いため、ポンプは使わず、溜め池の水を野菜栽培に使うそうです。ちなみに生活用水は、雨水をなべなどに溜めて、飲み水や料理に使っています。乾季で雨が降らない時は、ベトナムから水を購入しなければいけないとのこと。
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この溜め池の水は、汲み上げて洗濯水として使っています。