カンボジアだより
2010年02月8日
前回、カンボジア国内で家事使用人として、虐待を受けながら働かされていた少女の記事を掲載しました。今回は世界的な視点から、このテーマについて国連の専門家がコメントした記事をご紹介したいと思います。
写真c UNICEF
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詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html
「奴隷労働は世界各地の家庭に実在する」と現代的形態の奴隷制に関する国連専門家は語る
2009年12月1日、ジュネーブ
「家事使用人は、重労働、低賃金、および虐待(身体的、精神的、性的)にさいなまれ、事実上奴隷としての扱いを受けています。このような形態の奴隷労働は世界中の家庭に存在しています。」現代的形態の奴隷制に関する国連特別報告官ガルアナ・シャイニアン氏は、奴隷制度廃止国際デーに際して上記のとおり発言した。
「家庭内における隷属状態とは、弱い立場に置かれている個人が身体的および(ないし)精神的強制力によって、賃金なしで働かされ、自由を剥奪され、人間の尊厳に反する状況に置かれることをさします。家事使用人は、保障のない労働形態で、労使関係がきわめて個人的であるため、こうした強制労働の対象になりやすいのです。」とシャイニアン氏は述べた。
世界各地の家事使用人がおかれている、虐待的かつ保障のない労働環境に関して、国連、NGOなどから多くの報告が寄せられている。「家事使用人は、暴力やレイプを受け、監禁状態に追いこまれ、食事をあたえられなかったり、他者との接触を禁じられたりします。これほど非人道的な労働環境にあっても、情報不足や助けを求める機会がないことに加え、経済面の重圧や借金のために職を失うことを恐れ、身動きがとれない場合が多いのです。」と同氏。
児童労働を禁止する条項への抵触を避けるため、家事労働につく少年少女は訓練生と称されるケースが多い。こうした子どもは幼く、家族や友人とも離れていることで、完全に雇用主任せにならざるをえず、とりわけ危険性が高い。
国境を越えて家事使用人として働いている人々は、働いている国での法的身分が不安定であるため、特に弱い立場に置かれている。「家事労働を隠れみのに、主に女性や少女が仕事の実態を知らないまま海外の労働市場に誘い出されています。多くの人にとって、貧困を逃れるには、家族から離れ、時として国境を越えて職を求めるしか術がないのです。滞在資格を個人雇用者任せにする政策、法外なあっせん料、言語の壁、パスポートの没収。こうした問題が家事使用人として働く越境者をさらに人権侵害を受けやすい状況にさらしています。」
特別報告官は、越境労働者の人権および児童労働防止に関する国際文書への署名、批准を各国に求めた。
「家庭内での隷属状態は個人宅で生じていますが、各国政府にはあらゆる人権侵害から個人を守る義務があります。先に述べた、女性と少女を主な標的とした奴隷労働もその対象です。」
2008年5月、国連人権理事会は、ガルアナ・シャイニアン氏を「現代的形態の奴隷制、その原因と結果」の初の特別報告官に任命した。
(2010年1月13日 訳・植田あき恵)