カンボジアだより
2009年11月30日
こんにちは、長島です。私がカンボジアに来てから3ヵ月が経ちますが、世界経済危機がこの国に及ぼす影響を日々痛感します。NGOでは、ドナーからの資金援助が打ち切られ、プロジェクトが終了したという話をよく耳にします。カンボジアにおける輸出の80パーセント、GDPの12パーセントを占めるのが衣類産業(1)ですが、多くの若い女性を雇用する縫製工場が閉鎖されたというニュースもよく取り上げられています。
シーライツが、パートナーNGOのHCCとプロジェクトを行っているスバイリエン州に行き、通学や収入向上の支援の対象家庭にインタビューをすると、縫製工場で働くことが子どもの夢であったり、親が娘に将来就いてほしい職業としても縫製工場での仕事が時々挙がります。法律で定められている縫製工場の最低賃金は月45ドルで、平均賃金は70ドル(2)なので、1世帯の平均月収が40ドルほど(3)の農村の人たちにとっては魅力的な仕事です。しかし、先日もスバイリエンの支援対象家庭の女性と話をしていたときに、娘が工場で働いていたが、閉鎖してしまったので、今は家に戻って来たと話をしてくれた母親がいました。
6万人もの職を失った女性たちは、そして彼女たちの仕送りによって家計を支えられてきた家庭はどうなるのでしょうか? 11月15日の国連の発表によると、縫製工場での仕事を失った女性のおよそ15~20パーセントが、家族を支えるための最終手段として性産業でセックスワーカーとして働く道を選んでいることが調査で明らかになったとのことです。ベトナムの国境に位置するスバイリエン州では、仕事を求めてベトナムや、首都のプノンペンに出稼ぎに行くケースも増えていると思います。その過程で、自分で選んでいなくても、騙されて性産業で働かされしまう女性もいるのです。
今回は、今年に入ってから9月までに閉鎖した縫製工場についての記事を、ボランティアの方が翻訳して下さいましたのでご紹介します。
写真はプノンペンの縫製工場で働く女性の写真cPhnom Penh Post
人身売買をなくすためにご支援ください。
詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html
今年130の縫製工場が閉鎖と、政府報告
2009年10月1日(木)プノンペンポスト紙
チュン・ソパル記者
労働省は水曜日、今年度第1~3四半期において、130の縫製工場が受注減少により閉鎖もしくは一時営業休止となったと発表した。公式報告によると、9カ月間に77の縫製工場が閉鎖し3万683人が失業、加えて53の縫製工場が一時閉鎖したことで、更に3万617人が一時的に失業状態となった。
その一方で、データによれば、同時期に40の工場が操業を開始し、9千605人が雇用されている。一時閉鎖された工場の再開には充分な受注量が必要と、労働省監査局タウ・ブトーン氏は言う。「カンボジアの縫製工場が再開し地球規模の経済危機に立ち向かう道は、受注のみ。」 カンボジア縫製産業組合(GMAC)営業開発責任者カイング・モニカ氏は、カンボジア最大の輸出部門である本セクターにとって今が試練の時と話す。
「この大変な時期に、海外からの潤沢な受注に支えられている工場だけが生き残り、何とか生産を続けている。」と氏は言い、GMAC加盟工場のわずか283拠点が稼働中であると付け加えた。
カンボジア衣料業労働者民主連合(CCAWDU)のアッス・トゥン代表は、新工場に対する5年間の免税措置を受けるために、一時的に閉鎖した上で再開した工場もあると話す。氏によると、退職金を支給せずに労働者を解雇し、従来よりも悪い条件で新たな契約を結んで再雇用するために、一時閉鎖という方法を取っているケースもあるという。
氏は、工場主が「汚職にまみれた公務員や組合長」を買収し、カンボジアの法律で定められた倒産企業への法的措置をすり抜けていると言う。
世界銀行の報告書『Doing Business2010』には、カンボジアでは、破産法が通過したにもかかわらず、破産手続きが実現化していないと記されている。
それに対しカイング・モニカ氏は、GMAC加盟工場のうち閉鎖後に再開されたのはわずか2件にすぎず、双方とも閉鎖前とは別の経営者によって再開されたと話している。
(2009年11月13日 訳・小味かおる他)
(1) ADB report, p. v
(2)Ros Harvey, “Cambodian Garment Sector Project: An overview“
(3) IMF country report 3/59, cited in Polaski, p. 11