お知らせ

人身売買に関する法の履行、難航

カンボジアだより

2009年11月10日

 


DSCN7863.JPG こんにちは、長島です。
先日掲載した米国務省発表の人身売買レポート記事で、人身売買取締法の執行の問題点について触れましたが、今回も引き続きどのような点が問題視されているか紹介します。

 

 カンボジア政府は1996年に制定された、誘拐・人身売買・搾取規定法に引き続き、昨年新たに全52条からなる人身売買取締法(Law on Suppression Of Human Trafficking and Sexual Exploitation)を制定しました。内容としては、人身売買、買春・売春、わいせつ行為の定義とその処罰に加え、適用される領域も明記しています。第3条では、カンボジア国外で起きた犯罪においても、被害者または加害者がカンボジア人だった場合、同法が適用されると記してあります。人身売買取締法の執行における、国家間の協力と情報共有の重要性について述べた記事をボランティアの方が翻訳して下さったので、ご紹介します。

 

写真はカンボジアとベトナムの国境 cシーライツ

 

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詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html

 

 

カンボジアデイリー紙 20097410日ウィークリー・レビュー

カジュサ・コーリン記者

 

 人身売買に関する法の履行、難航

 

 カンボジアの人身売買防止新法には、国内で起きる人身売買に対処するとともに、国外においても自国民を救済する条項が盛り込まれているのだが、政府とNGOの協力関係が弱く、地域諸国内の連携も不十分であるため、実際の運用は遅々として進んでいないと、担当官や専門家から報告された。

 

 カンボジアは、人身売買(とりわけ女性と子どもを対象とする)の防止・抑制・処罰を目的とした2007年の国連パレルモ議定書を批准している。法務省イット・ラディ次官によれば、現在は啓発活動や警察・判事・検察官の研修に力を入れているという。

プノンペンでのフォーラムで、「しかし、現場の警官やソーシャルワーカーの研修も依然として必要」と、同氏は通訳を介して発言した。さらに、国家機関と地方機関の協力、ならびに政府と人身売買に取り組むNGO間の対話の改善も不可欠であると付け加えた。

 

 ラディ氏の見解は、2日間にわたる人身売買対策に関する国家間諮問協議において発表された。人身売買・密輸・労働および商業的な性的搾取に取り組む政府高官ワーキンググループがホストを務めた同会議には、女性省イン・カンタパヴィ大臣や社会福祉省イッチ・サムヘン大臣などを含む政府高官が出席した。タイ、ベトナム、韓国、マレーシアの代表も出席、各国の人身売買取締や諸国間の協力体制の強化について協議した。

 内務省の人身売買取締・青少年保護局のテン・ボラン警察准将は、国内外で人身売買の被害にあうカンボジア人の正確な数字はないが、カンボジアは人身売買の受入れ国であり、送り出し国であり、中継国であるため、適切な法的枠組を持つことが重要であると語った。

 

 さらに、2008年以降、新しい人身売買防止法は人身売買の概念を明確にし、パレルモ議定書に準拠しているとも説明。この法律により、カンボジア国民が国外で罪を犯し、その犯罪者または被害者がクメール人である場合に、カンボジア政府による起訴が可能になったが、同法の執行にあたっては依然問題が残ると付け加えた。

 同氏は、市民社会と行政側の限られた協力関係や国内の情報管理の未整備などの課題があることを、通訳を介して話した。

 

 人身売買取締アジア地域プロジェクト司法アドバイザーのアルバート・モスコウィッツ氏は、カンボジアは人身売買に対し適切な取り組みをかなり行っているものの、近隣諸国における磐石な法規制や、犯罪者引渡しや情報共有などを規定する地域条約も必要であると語った。

同氏は、「いったん一様の法律が機能すれば、各国は対話を始められる。必要なのは条約の整備で、警察官や捜査官がその条約履行について知っておかなければならない」と、会議後のインタビューに答えた。

 また、昨今の景気低迷が人身売買問題を助長するおそれがあるため、地域内の協力改善も併せて重要であるとも付け加えた。

 

 カンボジア、タイ、韓国はパレルモ議定書に署名したが、条約を批准したのはカンボジアのみで、ベトナムやマレーシアは未だ署名していない。これに加え、カンボジアは人身売買取締に関する覚書をタイ(2003年)およびベトナム(2005年)と交換しているが、覚書は法的拘束力を持たないため、各国の対応は足並みを揃えられていないと、子どもへの性的虐待問題に取り組むAPLE(Action Pour Les Enfants子どものための活動)のサムレアン・セイラ所長は話した。

 

「協力という言葉はあちこちに記されているが、実際はそれほど大きな協力はなされていない。本覚書への対応は極めて限られている」と同氏は言い、例として、情報共有の仕組みがないために、児童虐待や他の犯罪容疑でタイで捜査されている男がカンボジアに移動して同様の犯罪を繰り返したケースが複数あったことを挙げた。

「カンボジアだけでは問題解決はできない。各国間のタイムリーな情報共有が必要である。誰もが問題を認識しているのだから、共に問題解決に取り組むべきだ」とセイラ氏は語った。(翻訳・小味かおる他 2009916日)

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