カンボジアだより
2009年01月20日
中学2年生、国語の教科書に載っている、カンボジアの結婚式にある「ソンペアッ・プトゥン」という儀式の由来についてのお話。以下、要約を読んで、ジェンダーの視点から分析してみましょう。
昔、孤児の男の子が4人で森を歩いていると、オッチャーに出会いました。このオッチャー*は、4人にそれぞれ秘術を教えました。1人目は泳ぐ術、2人目は弓道、3人目は死人を生き返らせる術、4人目は将来を占う術。4人はそれぞれの技術を習得して大人になり、オッチャーにお別れを言って、妻を探しに森を出ました。歩いていると、海に出ましたが、既に夜になってしましました。占いが出来る男は「明日何が起こるか占ってみて」と他の3人から頼まれて占ったところ、「明日大きなわしが国王の娘を運んでくる」とのことです。翌日になると、実際にわしが海の向こうの方から現れ、若い娘を運んでいます。弓道の出来る男は、早速わしを打ち落としましたが、娘も海の真ん中に落ちてしまいました。そこで、泳げる男が遠くまで海を渡り、娘を陸まで運んできました。でも残念ながら既に息絶えていたので、死人を生き返らせる術を習得した男が娘を蘇生しました。
4人全員が、生き返った娘と結婚したいと主張しました。議論に決着がつかないので、裁判官に判断してもらう事にしたところ、裁判官は次のように決定しました。蘇生できる男は娘の(①)に、占いが出来る男は娘の(②)に、泳げる男は娘の(③)に、弓道の出来る男は娘の(④)になるように。
男たちは裁判官の決定に合意する際に、この決定が将来も守られるよう裁判官にお願いしましたので、この「ソンペアッ・プトゥン」という儀式が始まりました。
1.( )の中に「父」「母」「兄弟姉妹」「夫」を入れてみましょう。どういう理由で夫が決められたかも考えてください。
2.ジェンダーの視点から分析すると、このお話には問題があります。例えば?
(正解は、最後)
*オッチャーとは、魔術師の事で、悪いことを企んでいる子ども、言う事を聞かない子どもに、「オッチャーの所に連れて行くよ」と言うと大抵の場合効果がある。
私がこれを読んでいて、まず、なぜ何の為に、この4人の男の子は森を歩いていたのか、そして彼らは孤児でなくてはならないのか、と疑問に感じました。また4人が国王の娘と結婚をしたいと主張し決着が着かなくなったとき、裁判にかける前に、国王の娘の意見は聞かないのか、とも疑問に感じました。「意思表明権」の侵害です!ネガティブなことばかり書きましたが、中学生の時、教科書に書かれた話を、今回のように違う視点から見たらもっと面白く読めたのになぁと思いました。ちなみに、私の答えは①母(蘇生=世話をする、看病をする=母というイメージからです) ②父(将来を見る=自分の子どもの道筋を正す=父というイメージからです) ③夫(泳いで助ける=守ってくれる存在=夫というイメージからです) ④兄弟(弓道=一つのものを狙い撃ちする、おやつの取り合い=兄弟というイメージからです)でした。
正解1.①母 ②父 ③夫 ④兄弟
正解2.国王の娘(女性)は決定権を持っていない。その他「これは問題だ!」と思われること、皆さんはありますか?
中川香須美さん:カンボジア国ジェンダー政策立案・制度強化支援計画プロジェクト