カンボジアだより
2013年12月29日
駐在スタッフの上田です。
シーライツでは、子どもたちが権利の視点で物事を判断し決定していくことができるよう子どもの育成活動を行っています。また、こうした子どもたちを増やすために、子どもたちのネットワーク化やグループづくりに力を入れています。
先日、スバイリエン州のタナオコミューンにあるプーマウ小学校、プレーロバ小学校、フンセンタナオ小中学校の子ども代表49名(小4~中3)と、子どもの権利の普及活動について計画を立てるために話し合いを行いました。
さあ、教室に入って、話し合いをはじめよう! cC-Rights
まず、子どもたちが権利をどのように理解しているのか確認しました。「権利」という言葉が漠然としているので、「あなたたち子どもたちが、そもそも持って生まれたもの、与えられるべきものって何?」という質問から、グループディスカッションを行い、その結果を発表してもらいました。
子どもの権利ってなに?とリストアップ中 cC-Rights
子どもたちの答えをまとめると、子どもは「家族や親せき、周りの人たちから受ける愛情、教育、保健(特に予防接種)、食料、住居、衣服、IDカード」を持つべき(与えられるべき)ものと考えていることがわかりました。これらは子どもの権利を大きく分けたときの3つの領域(「生存する権利、成長する権利、守られる権利」)に含まれるものです。もう一つの領域である「参加する権利」は、この質問の仕方ではなかなか出てこない考えです。権利は与えられるものではなく、生まれもってくるものですから、質問に工夫が必要です。子どもたちに生まれもってくる「漠然なもの」について答えてもらうのは難しいことでした。最終的には、言葉ではなく、「自分の意見を言うことが大切だ」とか「同じ意見を持っている人たちとグループをつくることができる」という考え方を持つことが大切なので、今後もこのような啓発活動を地道に行っていくことが重要だと感じました。
また、権利ってそもそもどういう意味があるのか、権利を使うことによる効果と、使わないことによる影響などは、子どもたちにはまだ想像できません。今後実施する子どもの権利のトレーニングのポイントだと思います。
話し合いの結果を発表中 cC-Rights
活動計画を立てるにあたって、子どもたちをグループに分け、自分たちに何かできるのか、どのような活動を実施したいのかリストアップしてもらいました。
すると「きちんとしたトレーニングを受けて、その内容をしっかり理解し、他の子どもたちに広めたい」という意見が出されました。これはシーライツの活動と一致していますので、今後、シーライツが子どもたちに権利についてのトレーニングを実施し、友だち(ピア)同士が教え合う(ピアエデュケーション)活動を広めていくことになりました。
こうした中で、シーライツが思い描いていた活動とは別に、子どもたちから「貧しい家の子どもたちが学校に来れるようにお金を集めたい」という意見が出されました。これは、シーライツのスタッフがあらかじめ計画することのできない、子どもたちからしか出せない意見でした。この意見を提案した子どもたち自身も貧しい家で育っています。自分たちが困難な状況にあっても、さらに厳しい状況に置かれている子どもたちを、思いやることができる子どもたちの素直で優しい気持ちに触れることができ、私自身が励まされました。
今後は、シーライツを始め、保護者や先生たちが、子どもたち主導の活動を支えていく必要があります。そのために子どもだけでなく、保護者たちへ子どもの権利教育を行い、地域全体で子どもの活動を支えるような仕組みをつくることが、次の課題となっています。