カンボジアだより
2013年11月28日
タナオコミューン・トム村で子どもたちだけの集会を開催することになり、約80名の子どもたちが集まりました。
会場である集会所は、お寺の分所と集会所を兼ねているので、建物の中にブッダの像が祭られています。カンボジアのお盆(9月下旬)が近いということもあって、人々がお寺をお参りする理由や年上の人を敬わなくてはいけない理由などをシーライツのスタッフが説明して、まずは、みんなで一緒にブッダ像にお祈りしました。
スタッフのブントゥーンが子どもたちに「皆さんが思う『理想的な子ども』というのは、どんな子どもでしょうか?(英語で「Good model children」)」という質問をしました。
子どもたちから、「ほかの子どもや大人たちに信頼されるような子ども」「ほかの子どもが真似したり、学んだりしたくなるようなところを持った子ども」という、意見が出ました。
ここで、スタッフは「ピノキオ」の物語を紹介しました。
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物語の中で、おじいさんが木で作った人形「ピノキオ」を「どうか人間の子どもにしてください」、と願っていると、妖精があらわれて、「よい行いをしたら人間の子どもにしてあげましょう」と言いました。おじいさんは大変喜びましたが、その後ピノキオは悪い友だちにそそのかされて学校をさぼったり、人に嘘をつくようになりました。そうするとどんどん鼻が長くなっていきます。また、タバコを吸うなど悪いことをするようになって、今度はロバの耳やしっぽが生えてきました。そんなピノキオには、いつも忠告をしてくれる良い友だちがいました。この友だちに助けられてピノキオは心を入れかえて、クジラに飲み込まれてしまったおじいさんを救出します。そこで、ピノキオはおじいさんを守った勇気や行動を認められて本当の人間になることができました。
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スタッフが続けます。
「皆さんも、このような『理想的な子ども』になりたいですよね?
そのためには、子ども同士で励まし合ったり、学び合ったりできるようになることや、親を敬ったり、いろいろな知識を身につけること必要です。」
「おとなたちの中には、『子どもは何もできない』と思っている人も多くいますが、子どもだってグループを作り、ルールを定めて活動すれば、コミュニティの役に立つことや良い行いができるようになります。例えばお寺にお参りをするとか、ごみを集めるというのもよいことですね。」
そして、子どもたちに、「その『子どもグループ」を作ってみましょう」、と呼びかけました。
次に子どもグループを作るにあたり、リーダーを決めることにしました。
プロセスは、自薦・他薦によってリーダーの候補者を選び、その中からリーダーとして適当と思う子どもに全員で投票するという『選挙』を行うというものです。
候補者を選ぶ前には、「リーダーに向いているのは、どんな条件を持った人でしょうか?」と子どもたちに問いかけました。すると、「性格のよい人」、「礼儀正しい人」、「年上の子どもでもコーディネートできるような人」、「聡明な人」、「ほかの子どもたちに教えられる人」、「正直な人」などが挙げられました。
その後、「リーダーになってみたい人は前に出てきてください」というと、ぱらぱらと6,7名の子どもたちが立候補しました。また、友だちから推薦された子どもが、さらに6、7名、前へ出ました。
合計14名の候補者が前に並び、その子どもたちに自己紹介と自己アピールをしてもらいました。このようにみんなの前で自己アピールをしたことなどほとんどない子どもばかりなので、恥ずかしがって、なかなかうまくアピールできないこともありましたが、みんな無事に終えることができました。
いよいよ、投票です。ひとりにつき2名の候補者の名前(番号)を紙に書いて、投票箱に投票しました。そして、シーライツのスタッフが子どもたちの前で開票をしました。
紙に書かれた番号が読み上げられるたびに歓声や拍手が起こったりして、子どもたちはみんな大興奮でした。集計した結果、14名の中で票の多かった順に4名がリーダーになりました。子どもたちも結果に満足して、最後は拍手をして選ばれたリーダーを祝福しました。
これから、選ばれた4人のリーダーたちに、ほかの子どもたちをファシリテーションできるようなトレーニングを行っていき、子どもの権利についての知識やピアエデュケーション(子どもから子どもに知識や情報を伝達していく)活動を広げていきます。また、ほかの村でも同じように子どもグループを組織していく予定です。
このように学校内での活動に属さない「子どもグループ」を作ったわけですが、その背景として、子どもたちの中には、学校に毎日通っている子どももいれば、定期的に通っていない子ども、ドロップアウトしてしまった子どもも多くいるからです。学校に行けない子どもも、この校外の子どもグループに参加してもらうことによって、ピアエデュケーションの活動に組み込むことができます。また、ふだんは学校に通っていても、親が忙しい時に1、2日だけ学校を休んで手伝いをしなければならないことがあれば、この校外の子どもグループの中の子どもたちから情報を得て、学校を休んだ間の遅れを取り戻すこともできます。
このように、学校に通っていない子どもたちも、地域の活動に巻き込んでいきたい、知識を得るだけでなく子ども同士で支え合えるグループにしていきたい、と考えています。