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おとなも子どもも希望をもてる村へ一歩前進 ~生計向上支援活動の過去、現在(いま)、そして未来へ

カンボジアだより

2013年03月30日

 

おとなも子どもも希望をもてる村へ一歩前進 ~生計向上支援活動の過去、現在(いま)、そして未来へ

 シーライツは、2006年から「カンボジア・スバイリエン州で子どもの人身売買及び児童労働防止プロジェクトを行なっています。半年前からは、ベトナムに子どもを物乞いに出す家庭が最も多いコンポンロー郡タナオコミューンで子どもの出稼ぎを防ぐ新しいアプローチによる事業を開始しました。この事業は、タナオコミューンの人々が、違法な出稼ぎにでることなく、地域で生計を立てることができるようになり、それまで、出稼ぎに連れていかれていた子どもたちが、教育の機会を得られるようになることを目的としています。

 カンボジアは、人口の8割以上が農業で生計を立てていて、タナオコミューン人々もほとんどが農民ですが、この地域では全国平均の10倍~15倍の化学肥料を使用しています。また、田植えをする習慣がなく種を直蒔きするため、1ヘクタールあたり平均の10倍ほどの種を蒔かなければなりません。結果として土壌は荒れ、収量は下がってしまいます。

 シーライツは、この状況を改善するため、技術と知識を向上させるとともに、リーダーグループを形成し、そのグループがそれらを出稼ぎのリスクが高い貧困世帯に教える、というシステムを導入しました。

 14名のリーダー(キーファーマーと呼びます)たちを対象に、これまで有機肥料の作り方や、田植えの意義、稲刈りの方法、家庭菜園についてトレーニングを実施し、各家庭で実践してもらいました。

 半年が経過し、この14名のキーファーマーたちから、特に優秀な3名(タンさん、マオさん、オウさん)が育ってきました。この3 名の共通点は、①従来の農業のやり方が問題であることを理解しており、トレーニングで学んだことをすぐに実践する、②他人に頼らず必要なもの(種など)は自分で投資をする、③成功と失敗の両方から学ぶ、④あきらめない、⑤トレーンングに集中していて積極的に発言する、⑥他の人に教える気持ちが強い、などが挙げられます。

 この3名に、タナオコミューンのよりよい未来を想像してほしいと願い、コンポンスプー州で農民組合をつくり、主に野菜を共同出荷している組織から、そのシステムや運営方法を学ぶことを目的に、4泊5日のスタディーツアーを計画しました。

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 ツアー初日は、タナオコミューンから出てきた3名とプノンペンで合流しました。タンさんが、プノンペンに来たのは7年ぶりぐらいで、この間の街の変わり様に驚いていました。

 まず、コンポンスプー州の農民組合の試験農場(試験センター)に行きました。このセンターの目的は複数ありますが、第一に買い手から注文を受けたセンター職員と農民たちが共同で生産量を調整し、計画に沿って生産された作物の共同出荷の場として利用されています。現在65の組合員が、週に3回、出荷しているそうです。次に、このセンターは組合員に技術指導をする場所としても活用されています。2ヘクタールの土地には建物と農地があり、野菜が所せましと植えられています。

 仮に農家が決まった量を生産できない場合には、決まった生産量を達成するための、生産補てんセンターの役目を担います。また、農民たちによる、意見や情報交換の場として利用されています。

march2.jpg センターで説明を受けた後、3名のキーファーマーたちは、野菜を生産している組合員の農家を訪問し、野菜作りや農地の管理方法について学びました。特に有機肥料の生産と土壌の改良が活動の基礎になることを学びました。また、メンバーたちは組合に参加した後、生計が安定し、長期的なプランを立てられるようになったと話していました。

 その後は、別の地域で、村人たちが共同で運営しているコミュニティーショップや、コミュニティーポンド(共同池)を見学し、地域の人々が協力して活動を継続している様子を学びました。

march3.jpgさらに、別の村では、貯蓄グループ活動を学びました。活動が開始した5年前、わずか3名のメンバーで集めた元金は30,000リエル(約750円)だったそうですが、現在、メンバーは17名に増え、20,000,000リエル(約50万円)の元金を基にメンバーが資金の運用をしています。これらの活動は、あるNGOがサポートして始まったものですが、その団体が撤退して5年経過しても、村人が中心に活動を続けることができています。

 また、1996年にそれまで誰もやったことがなかったSRI(※)手法をカンボジアで最初に導入した農家を訪問することができました。この勇気あるメイ・ソムさんという方は「何度も練習をして、失敗と成功の両方から学ぶことが大切」とコメントしていたのが印象深かったです。

 また、3名にとって、特に学びが多かったのは、農家でのホームステイだったそうです。ホームステイ先のご家族とキーファーマーたちは、この地域で活動を始める前後の生計の変化や、活動の継続性について深夜まで語り合ったそうです。

 3名のキーファーマーたちは、その後、自分たちで実施する活動の計画を立てました。活動内容をまとめると以下になります。

 ・有機肥料の生産、土壌の改善
 ・貯蓄グループの形成、活動開始
 ・野菜の生産、販売
 ・コメの生産と販売、コメの精米
 ・マーケッティング(販売先の確保)生産管理
 ・メンバーの育成、拡大
 ・運営能力の向上

march4.jpg これらの活動すべてを今すぐできるわけではありません。しかし、生産という基本から、ネットワークを活かし他の農家に新しい技術を指導し、農家同士が協力をするという図式ができました。

 「見学した地域とタナオの違いは人々の協力姿勢だと思う。村に戻ったら、ほかの村人たちと話し合って、これらの活動を一緒に進めていきたい。特に貧しい人たちに参加してもらいたい」とタンさんは言います。

 最初のステップは、日々の活動に集中し、野菜やコメを生産することです。この研修の最後に、私たちは彼らに宿題を出しました。それは、狭い場所でも野菜づくりができるよう、また、野菜が育ちにくい雨季に水の量をコントロールできるような新しい野菜づくりの手法です。

march5.jpg 金曜日の夜に村にたどりついた彼らを、翌週火曜日に訪問してみると、3名のうち2名は、新しい手法を取り入れ、野菜づくりを始めていました。しかも、蒔いた種はすでに芽を出していました。

 このスタディーツアーを通して、シーライツはキーファーマーたちに、成功した家族の過去と現在の様子、そして、努力をすれば未来が開けるということを示すことができたと感じました。

 村の人たちの未来に大きな実をつける種が芽吹き、子どもたちが安心して学校に通うことができる村づくりが始まったことを確信しました。

(カンボジア駐在スタッフ 上田美紀)

(※)節水型の稲作技術。水田に25センチほどの間隔で若い苗を1本ずつ丁寧に植える。何本もまとめて植えるより、「稲が持つ本来の生命力を引き出せる」という。少ない水でも育つよう何度も水を抜き、除草管理もきめ細かくすることで茎が太くなり、穂が増え、米粒も大きくなる。

子どもの権利についての研修や人身売買・児童労働に関する子ども向けの啓発に必要な文房具を配布することができます。

童話や物語の本を5冊購入し、本が傷まないように補強してから図書室に届けることができます。

村の清掃と衛生について学ぶ「ゴミ拾いキャンペーン」を1回開催することができます。