カンボジアだより
2012年03月12日
今回ご紹介する記事は、2011年12月27日のプノンペンポストに掲載された「ペドファイル(*注)への恩赦に怒りの声(Anger Over Pedophile Pardons)」です。この記事の4日前に、カンボジア政府がペドファイルの恩赦を国王に要請したことがRFA(Radio Free Asia)に掲載され、カンボジア国内で反人身売買の活動を行っている数団体が抗議の声を上げました。
恩赦により釈放されたペドファイルの中には、カンボジア史上最大規模の性犯罪事件で有罪判決を受け服役中であったロシア人投資家が含まれていました。その人物は、逮捕前、政府認可の投資会社のトップとして巨大観光リゾート開発に関わっていました。恩赦はカンボジア政府からの要請であると強調されており、政治的背景によるものであることは明らかであると批判を受けています。
カンボジアでは、2003年に国を挙げて反ペドファイル推進活動に乗り出し大きな成果をあげているものの、このような政治と金の癒着をにおわせる状況は喜ばしいことではありません(翻訳チーム 谷口まゆみ)。
*注 ペドファイルとは子どもに性的欲求をもつ人のことですが、カンボジアでは通常子どもを性虐待する人という意味で使われています。
ペドファイルへの恩赦に怒りの声
メイ・ティッタラ記者、ヴィンセント・マクアイザック記者
2011年12月27日 プノンペン・ポスト
http://www.phnompenhpost.com/index.php/2011122753638/National-news/anger-over-pedophile-pardons.html
先週、3人目の外国人ペドファイル(オランダ国籍。2005年に少年6人に対する性犯罪で懲役10年の刑を受け服役中)が恩赦を受け釈放された。
プレイ・ソー刑務所スン・レアン所長の談話によると、オランダ国籍のレネ・ポール・マーチン・オーベルが恩赦によりプノンペンの刑務所から12月23日に釈放されたとのことである。
1週間で3人もの外国人ペドファイルの早期釈放は偶然ではないと現地のNGO、APLE(Action Pour Les Enfants=子どものための活動)のセイラ・サムレアング代表は懸念を表明した。外国人ペドファイルの早期釈放に恩赦が用いられたのは初めてのことであり、ひとたび門戸が開かれたことで、今後この措置はより頻繁に悪用されるであろうと同氏は話す。
「我々は、子供を性虐待した犯罪者が恩赦を受け釈放されるのを黙って見ているわけにはいきません。カンボジアという国の脆弱さ、カンボジアの子どもたちの無防備さ、そして再犯率の高さからも、そのような性犯罪者たちは最長期限で収監され、その後国外追放されるべきなのです。」
12月20日には2人のペドファイルが恩赦を受け、プレアシアヌーク刑務所から釈放されている。このうちドイツ国籍アレクアンダー・ワトリンは15歳未満の少年4人に対する性犯罪、ロシア人実業家アレクサンダー・トロフィモフは未成年の少女17人に対する性犯罪で、それぞれ懲役7年と8年の実刑判決を受け服役中であった。
2008年3月にプノンペン地裁で審問を終えて連行される
ロシアのペドファイル、アレクサンダー・トロフィモフ(左) cReuters
「トロフィモフがこの3人の中でいちばんの危険人物です。」とサムレアング・セイラ代表は言う。この元巨大リゾート投資家は、ロシア国内においてわずか9歳の幼い少女たちをレイプした疑いで指名手配中である。トロフィモフはカンボジアで懲役17年の判決を受け服役中であったが、2010年にカンボジア控訴裁判所により懲役8年に減刑されていた。
シソワット・トミコ王子は、トロフィモフの恩赦は政府要請によるものと話し、王室は本件との距離を置いている。
カンボジア憲法には恩赦の方法が二通り規定されている。国王自ら恩赦を与える場合と、カンボジア政府が国王に恩赦を要請する場合である。トロフィモフのケースは後者にあたる、と王子は付け加えた。
内務省関係者によると、同省はトロフィモフの恩赦を要請していなかったにもかかわらず恩赦リストに彼の名前が含まれていたことに驚いており、司法省にリストが提出された後に書き加えられたものとみている。
サムレアング・セイラ代表は、トロフィモフの恩赦は政治的圧力の結果以外のなにものでもないと語り、APLEと国内の子ども保護団体はトロフィモフの国外追放を求める嘆願書を内務省に提出する予定である、と付け加えた。
子ども保護担当官らは、トロフィモフの恩赦を得るために行使されたとみられる政治的圧力は、ほかのペドファイルたちが法の網をかいくぐるための新たな抜け道を切り開いた、と警告を発している。
カンボジアにある複数のNGOが、トロフィモフを国外追放するための国際的圧力を得ようと働きかけており、現地で活動するユニセフなどの国際団体にも彼らの訴えに対する賛同を呼びかけている、とサムレアング・セイラAPLE代表は語った。
【参考】
◆APLE (Action Pour Les Enfants):http://www.aplecambodia.org/
(2012年1月23日 翻訳・谷口まゆみ)