お知らせ

カンボジア洪水緊急支援のご報告

カンボジアだより

2012年02月8日

 

2011年10月、カンボジアはこの10年間で最悪の洪水に見舞われていました。カンボジアの洪水の特徴は、日本の鉄砲水が押し寄せるようなそれとは違い、緩やかな水が少しずつ、しかし、着実に増え続け、村や田畑を湖のようにしてしまいます。
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ゆっくり水が押し寄せるのだから避難する時間も十分と思われがちですが、それほど簡単ではありません。道路が冠水すると移動が大変困難になります。カンボジアの農村は道路が舗装されていませんから、ぬかるんだ泥道を移動することになります。車は通れませんので徒歩やバイクで移動するのですが、病人やお年寄りは移動が困難です。また、家畜はどうしたらよいでしょう。村人は、生活の糧にするため大小の家畜を飼っています。大きいもので牛や水牛、豚も鶏もいます。このような家畜の避難場所は限られています。ふだん、番犬として活躍する犬たちも家族の一員ですが、避難場所につれていくのは嫌がられます。また、カンボジアの住宅は高床式の木造が多く、さらに貧しい人たちは茅葺(かやぶき)の家で生活しています。このような住宅では安全面も気がかりです。長期的に家を空けると盗難に遭うかもしれません。

このような状況ですので、ふつう、カンボジアの村人は多少の大雨では動こうとしません。地域が冠水すると、小さな家畜は高床の家に上げて、しばらくなら一緒に生活します。大きな家畜は乾いた場所に避難させますが、村人たちと協力して保護します。
しかし、今回の水害は想像以上の被害をもたらしました。逃げ遅れて死亡した人は、全国で250名を超え、避難者は150万人にも昇りました。水田の1割以上が被害にあい、収穫が絶望的となりました 。

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シーライツの活動地でも、大きな被害が出ました。ベトナムとの国境沿いにあるスバイリエン州のチャントリア郡とコンポンロー郡は、平たんな地形で水田に囲まれた地域です。今回の水害で、家が倒壊してしまった世帯や、数週間にわたって冠水したため泥壁が腰の高さで崩れ、壁の一部が流された世帯がありました。残念ながら亡くなった村人もでました。

シーライツの事業対象世帯で水田が被害に遭い、今年の収穫を諦めた世帯がありました。このような世帯は、収穫で返済しようと購入していた肥料や農薬の借金だけが残りました。

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年に一度しかチャンスがない収穫をあてにし、その期待が裏切られた場合、村人たちの選択肢は多くありません。とにかく短期間で収入を得る方法を探り、その日の暮らし向きを支えるために家族全員で必死になります。借金を抱え出稼ぎを余儀なくされる世帯も多く、子どもも一緒に連れていかれ、学校を休学したり退学する子どもが出る可能性が高くなります。

 

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今回、シーライツは被災者の支援、特に子どもたちが今後被害に遭わないことを目的に援緊急支援を行いました。対象世帯の中で特に被害が大きかった40世帯を対象に、一世帯あたり当座の食糧として米を25㎏、水田から水が引いたあと短期間で収穫できるように各家庭に種もみを25㎏、汚い水をろ過する器械を1基贈りました。寄贈式では参加した約80名の対象者に、「子どもたちが、出稼ぎ、特に物乞いなどさせられることなく、継続して教育を受けられるように」という今回の支援の目的をはっきりと説明し、村長さんをはじめ地域住民にも賛同を得ました。今回は、たくさんの村人たちと共にこの支援の目的を共有し、確認しあうことで緊急支援の意義が深まったと感じます。村人たちは、大変な状況にあるにもかかわらずしっかりと生活を立て直そうとしています。その村人たちに寄りそうかたちで、シーライツは、今後も村人と活動を続けていきます。 (カンボジア駐在員 上田美紀)

 

子どもの権利についての研修や人身売買・児童労働に関する子ども向けの啓発に必要な文房具を配布することができます。

童話や物語の本を5冊購入し、本が傷まないように補強してから図書室に届けることができます。

村の清掃と衛生について学ぶ「ゴミ拾いキャンペーン」を1回開催することができます。