カンボジアだより
2011年11月7日
こんにちは。甲斐田です。
近年、カンボジアでは、残念なことに子どもたちを利用する孤児院ビジネスがますますさかんになっています。
私たちシーライツは、観光客に子どもの権利を最優先しないような孤児院を訪問するのは控えてほしいとメッセージを伝えるチャイルドセーフ・キャンペーンを、カンボジアのNGO、フレンズ・インターナショナルとともに行なっています。孤児院を訪ね、子どもたちの助けになりたいと思う気持ちは、とてもわかります。けれども、子どもに良かれと思ってやったことでも、長期的にみると孤児院訪問が必ずしも子どもたちのためになっていないことがあるのをこの記事によって知っていただけたらと思います。
【懸念が広がるカンボジアの「孤児院ツアー」】
2011年7月27日 TAIPEI TIMES / AFP通信
タン・チン・ソティ記者
http://www.asafeworldforwomen.org/children/c-asia-pacific/ch-cambodia/967-cambodias-orphan-tourism-sparks-concern.html
短期間ボランティアたちには、善意があるかもしれない。しかし最も傷つきやすい子どもたちを危険に晒していると、子ども保護の専門家は話す。
cDawncom/AFP
写真AFP通信より。
シェムリアップ:カンボジア観光の中心シェムリアップにある泥だらけの中庭の壁に、何百人ものかつてのボランティアたちの写真が並ぶ。彼らはかつて孤児院の子どもたちにとって馴染みのある顔であったが、今はもう去ってしまっている。
アコド孤児院にある色彩豊かなこのギャラリーは、この貧しい国の子どもたちに時間と技術を提供する休日の観光客が増えていることを示すよい例である。しかし、専門家は彼らのしていることは効果があるというよりもむしろ害になっていると心配する。
ニューヨークから来た20代の学生であるマリッサ・サラウディは、アンコールワットの近くで、3歳から18歳までの60人以上の孤児を抱えるアコド孤児院で英語を教える数多くのボランティアの1人だ。
孤児院で働くため週50ドルを支払っているこの若いアメリカ人は、旅行途中に2、3日滞在しようと計画する。しかし、彼女は、彼女のように現れては消えるボランティアと接することが子どもたちにとってつらいことだとわかっている。
「孤児院を訪れてはすぐに去るボランティアがたくさんいるのです。」と彼女は話す。
一人来ては、一人去る
「孤児院は、ボランティアにすぐに去ってしまうことを子どもたちには知らせない方が良いと話しています。決して『1週間で出ていくの。』と言ってはなりません。その類のことは言ってはだめと言うのです。なぜなら子どもたちの機嫌を損ねてしまうから。ただ(何も告げずに)来なくなるほうがましだと言われます。」
短期間のボランティアたちには、善意があるかもしれない。しかし最も傷つきやすい子どもたちを危険に晒している、と子ども保護の専門家は話す。
世話をしてくれる人が変わると子どもは喪失感を抱く
「子どもの世話をする人が頻繁に変わる事は子どもに喪失感をもたらし、すでに心に傷を負った子どもたちにとっては、喪失感がずっと続くことになります。」と、ユニセフの子ども保護の専門家、ヨランダ・ヴァン・ウェスタリングはAFPに話した。
「さらに、周知のとおり多くの場合ボランティアは、身元審査を受けることなく孤児院にやって来るので、頻繁に見知らぬ人に子どもたちを晒すことは、暴力、虐待の危険を子どもたちに与えています。」
年間1万人以上の訪問者を魅了するアンコールワットへの出入口として、この活気の無い川辺の街には、観光客の波が途絶えることはない。
そして、多くの人びとは、アジアで最も貧しい国の一つであるこのカンボジアで、単なる観光に留まらず何かをしたいと感じる。
ホテル、カフェ、みやげ物屋の掲示板には、大きく目を見開いた子どもたちが学校や孤児院の為に、時間とお金を自分たちのために寄付するよう旅行者に呼びかけるポスターが貼られている。
「訪問者は貧困を目の当たりにし、気の毒に思います。」と、地域の団体とボランティアをマッチングする機関「グローバルティア」のプロジェクトマネージャー、アシュリー・チャプマンは話した。
「彼ら(訪問者)は、何かをしたいと思うようになり、子どものプロジェクトに何時間か訪れ、おもちゃやお金を寄付するかもしれません。そして、休日の写真を記念におさめ、自分たちは役に立ったと満足するのです。」と話す。
いわゆるボランティア観光業が繁栄すると、子どもたちを収容する施設も同様に繁栄する。
ユニセフによると、過去6年間でカンボジア国内での孤児院の数は、およそ2倍の269になり、12,000人の子どもたちを収容しているという。
社会から取り残された都会の子どもたちと若者に働きかける地域団体、フレンズ・インターナショナルによると、観光によって孤児院の数が増加しているという。
プノンペンやシェムリアップなどの大都市では、孤児院訪問は「観光名所」になってきているとフレンズ・インターナショナルのオルタナティブケア・プロジェクトマネージャー代理、マリー・コーセルは話した。
この観光業が、結果として非常に貧しいが、実際は少なくとも一人は親がいる多くの子どもたちを(孤児院)施設に収容することを促していると話した。
10分の1の施設だけが公営で、残りは存続するために慈善寄付に頼っている。
シェムリアップのアコド孤児院では、サラウディが1本しかない木の木陰に子どもたちを集めて午後の活動(授業)を行っている。
彼女の手本にしたがって、孤児たちは草で帽子を作り、夜の伝統的なクメールダンスショーで着る円錐形の帽子や衣装に、緑や黄色のペンキで色を塗る。
毎日開催される30分のイベントは、子どもの出演者に対し感謝の気持ちを込めて、寄付をする観光客で賑わう。
「子どもたちは自分たちの生活のために、観光客に対し物乞いや、ショーを開催することにより、自ら資金調達をするのを期待されている子どもたちについてのリスクを心配しています。」と、ヴァン・ウエスタリング氏は話した。
「子どもたちはベストを尽くさねばならず、また、もしそうしなければ自分たちの施設での生活のために十分な資金が集まらないということを聞かされているのです。」と、ヴァン・ウエスタリングは話した。「そのような安全とは言えない環境で生きることが子どもたちにとってどういうことか少し考えれば想像することができるでしょう。」
孤児院で短期間のボランティア活動をしようかと思案している観光客に対する彼女のアドバイスは単純だ。「孤児院には行かないで、献血でもした方がいいです。子どもに昼間の活動を提供し、夜には子どもを家に帰すような地域ベースの団体を援助することです。」
アリゾナ州出身である、50代のインテリアデザイナー、ベスティー・ブリテンハムと、彼女の15歳になる娘アレックスは、上記のように、毎晩子どもたちを家族の元へ帰すような、グレイス・ハウス・コミュニティー・センターで3週間、ボランティア教師として過ごした。
数か月前から旅行を計画していたこの母と娘は、評判の良いセンターでボランティアをする事は、自分たちの国(アメリカ)より、わずかな資源や機会しかない国に変化をもたらす良い機会であると話す。
アコド孤児院のボランティアのように、ベスティーは休日(ボランティアとして時間とお金をかけて)働けることの特権に対して対価を払う。しかし、その経験から否定的側面は見当たらない。
「このようなボランティアをするときは、自分のお金を使って、自分自身が大きく成長するとともに、子どもたちに教えることができます。こんなことは値段がつけられるようなものではなく、貴重な経験です。」と彼女は話す。
(櫻井智子・訳 2011/8/13)