カンボジアだより
2011年07月21日
はじめまして。
今回インターンとして東京事務所でお手伝いをさせていただきます、深川久美子です。
どうぞよろしくお願い致します。
日本では「国際養子縁組」(国籍の異なる養親と養子の間で行われる養子縁組)という言葉はあまり聞き慣れないかもしれませんが、米国務省領事局によると、米国では2009年度だけで、公的な児童福祉施設を介した国内養子縁組が5万7466件、また、国際養子縁組は1万2744件も行われたそうです。 (ちなみに、同年度の国際養子縁組の子どもの出身国は多い順に、中国、エチオピア、ロシア、韓国)。1993年には、約75カ国が締結したハーグ条約・「国際養子縁組に関する子の保護及び協力に関する条約」により、国際養子縁組の手続きは全て親と子どもの両国の法務当局の規制に従って行われ、人身売買など不法な養子縁組を防止する措置をとることが義務付けられました。カンボジアはハーグ条約の締結国の一つですが、乳幼児人身売買の疑いなどをアメリカから受けたのを発端に、国際養子縁組に関する法や規制を再度見直しています。今回はその取り組みと今後の発展について書かれている記事を紹介したいと思います。
ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが2002年にカンボジアの男児を養子として引き取り、世界中で注目を浴びました。その一方で人身売買を行う不法な養子縁組斡旋機関が摘発されたりと、まだ色々な課題が残っています。2005年には、英国政府がカンボジアからの養子縁組を禁止したことを受けて、6組のカップルが禁止命令を違法だとして起訴しました。起訴した側の主張の中には、次の二点が含まれていました。第一に、すでにさまざまな審査を通り、手続きに従って養子を受け入れることを許可されていたにもかかわらず、その途中で禁止されたこと。第二に、カンボジアでは膨大な数の孤児がおり、人身売買などの問題があるからこそ、子どもたちの権利を守るために国際養子縁組を許可すべきであること。
国際養子縁組を含め、あらゆる場合でも子供の権利が守られ、健やかに育つことができるような枠組みが整わなければ、子どもの本当の幸せにはつながらないでしょう。実は、ロシアを除き、日本はハーグ条約を締結していない唯一のG8主要国であり、今年になってやっと日本政府は本格的に加盟の方針を表明しました。日本では、ハーグ条約が定める、国際結婚が破綻した後の親権争いの解決法を巡って議論がされてきました。同条約には、国際結婚が破綻して、片方の親が子どもを国外に連れ去った場合、子どもを一度元の居住国に連れ戻して親権争いを解決しないといけない、と定めてあります。しかし、日本人の母親が夫によるDV(家庭内暴力)から逃れるために、子どもを連れて帰国したケースが多くあります。また、日本では共同親権という発想が定着していないため、片方の親が子供を育てる全責任を負い、結果的に十分に子供を扶養することができない、というような複雑な問題にもなっています。別れても子どもへの責任はきちんと果たすという当然の常識がしっかり定着することとあわせて、共同親権についてなど、今後の日本の取り組みにも要注目です。
【国際養子縁組手続きにさらなる遅れ】
2011年5月5日 カンボジア・デイリー紙
アリス・フォスター記者
カンボジア政府は、外国人からの養子縁組申請受け入れを再開する計画を2012年4月まで延期すると、政府関係者は話した。本計画は、2009年成立の国際養子縁組に関する法律施行を目的とするガイドラインを策定する時間を政府に十分与えるため、国会提出が見送られていた。
新規申請の手続開始予定日が1年間延期された、とウム・ソパンナラ社会福祉省児童福祉局長は話した。
「我々は法律の施行に関する多くの文書を準備するために(再開を)延期した。」とソパナラ氏は語った。同氏はさらに、(カンボジアの)閣僚会議令と布告の草案について、ハーグ国際私法会議常設事務局からの推薦を待っていたことに触れ「養子縁組は非常にデリケートな課題である。そのため我々は慎重に対応し、このような規約に細心の注意を払うべきだ。」と述べた。
政府が認可する国際養子縁組あっせん機関の数については未だに国際的な同意に至っておらず、この問題が解決しない限り養子縁組は実現できないと同氏は付け加えた。
ユニセフ代表のリチャード・ブライドル氏はこの延期を歓迎した。「これ(延期)により、政府が必要な規制の枠組みを整え、国際養子縁組に対する適切な制度を構築する為の時間を確保できる。さらに、行政職員の訓練と監視システムの整備も可能になる。」と同氏は電子メールを通じてコメントした。
アメリカは2001年、乳幼児人身売買の疑惑を受けて、カンボジアからの養子縁組を禁止した。オーストラリアとイギリスも同様にカンボジアからの養子縁組を許可していない。在カンボジアのイギリス大使館は、新法に基づく手続きの情報を同国教育省に送り、カンボジアの省庁と共に今後調査を続けていく予定であると同国大使館政治局広報担当官のネン・ヴァンナック氏は語った。
オーストラリアはカンボジアの国際養子縁組に関する新法の実際の履行状況について監視を続ける、とオーストラリア大使館広報担当官は電子メールで述べたが、当局がカンボジアからの養子縁組手続きを進めるかどうかについては、明確にしなかった。
BNG法律事務所のブライドル・スイートマン外国弁護士によると、国際養子あっせん機関は今年中の登録開始を見込んでいたという。同氏はこの法律により子どもの人身売買を防ぐことができるとし、「養子あっせん機関は準備が整っており、いつでも活動を開始できる状態だ」と話している。
(櫻井智子・訳 2011/05/22)