カンボジアだより
2011年04月9日
シーライツの現地パートナーNGOのフレンズ・インターナショナルの調査によると、カンボジアには路上で働いたり、生活をしているストリートチルドレンが14,000人から24,000人いるといわれています。特に観光地であるプノンペン市内、シェムリアップ州、シアヌークビル州では、旅行者を目当てに路上で物売りや物乞いをしたり、路上で生活したりすることで、さまざまな危険にさらされる子どもたちがたくさんいます。旅行者がストリートチルドレンにお金をあげたり、物を買ったりすることによって無意識のうちに子どもの路上生活を助長してしまいます。子ども買春を目的として入国した旅行者がストリートチルドレンに接触する機会が多くなり、旅行者による性的搾取の被害を受ける子どもがいます。今回はこの問題に対してのカンボジア国内の取組みを取り上げた記事をご紹介します。
シーライツも、フレンズ・インターナショナルと協働で、子どもを守るためのヒントが書かれた、カンボジアへの旅行者用リーフレット「チャイルドセーフ・トラベラーガイド~カンボジアのストリートチルドレンを助ける7つの方法」の日本語版配布キャンペーンを行っています。
こちらのキャンペーン・ウェブサイトからリーフレットがダウンロードできます!
▼http://www.c-rights.org/childsafe/
カンボジアの親たちに就業を、子どもたちに教育の提供を
メディア・グローバル 2011年2月4日
カンマ・ソーダーソン記者
カンボジアは人気の高い旅行先であり、2007年以降、カンボジアには年間200万人を超える旅行者が訪れている。カンボジアでは旅行者に本、ポストカード、小物を売る子どもたちを至るところで目にする。多くの旅行者は子どもたちのためになると思って商品を購入しているが、実のところ、旅行者のこの行為が児童労働に加担している。
現在、日常的に観光業に関わる子どもの数は統計上明らかになっていない。国際労働機関(ILO)は2011年にカンボジアの児童労働に関する調査を実施する予定だ。確かなデータがない中で、就学率は児童労働を測る指標とされている。すなわち、学校に通う子どもは労働に関わる傾向が低い。2009年は初等教育を受ける年齢にあたる子どもの94%が就学していた。
カンボジア政府は、2015年までにユネスコのEducation For All(すべての人に教育を:EFA)の目標を達成するために国際社会と共に取り組んでいる。この目標では、すべての子どもたちへの正規・非正規の教育提供、男女平等、より質の高い初等教育の提供を推し進めることを重視している。
旅行者に商品を売る子どもたちは、日々の稼ぎで家族を支えている。これらの子どもたちは学校に通っていない。カンボジアのシアヌークヴィルでストリートチルドレン問題に取り組む団体M’Lop Tapang(メロップ・タパン)の共同創設者であるマジー・エノ氏はメディア・グローバルに対して、「貧困によって子どもは路上で働く生活を送らざるをえなくなる。子どもの親は失業中か、薬物もしくはアルコール依存症、または幼子を抱えるひとり親で働けない状況」と話す。
子どもたちは、たいていレストランやバー、また海辺で観光客に近づく。観光客は子どもたちが無事に家に帰り、その日を送れると思い商品を購入する。逆に、子どもたちは旅行者に商品を売ることで収入を得続ける。ILOの児童労働に関する上級専門家であるシムリン・シン氏はメディア・グローバルに対し、「子どもたちが路上で稼ぎ続ける間は、子どもたちやその家族に路上や海辺での物売り行為をやめ、学校や職業訓練に戻るよう説得するのは、ソーシャルワーカーにとって難しい。一方で、外国語の上達やコミュニケーションスキルの向上といったプラスの結果も見られるが、長期的に見ると学校教育の欠如は人としての根幹の能力開発を損ない、貧困の継続をもたらす。結果として、カンボジアの経済が発展しないことにつながる」と話す。
カンボジアは世界最貧国のひとつであり、2010年における国民一人当たりのGDPの推定額は783ドル。2010年における人間性開発指数(HDI)は169か国中124番目であり、東アジアと太平洋の地域平均を下回る。多くのカンボジア人は極めて貧しい中で暮らし、一般家庭には限られた財産しかなく、社会的な格差が激しい。このような背景によって、商業的な性的搾取が助長され、カンボジアの子どもたちは脆弱な立場に置かれてきた。
一見したところ危険がないように見える子どもの路上での物売りという行為は、子どもたちをより深刻な状況に陥れる可能性をはらんでいる。シン氏は「路上で商品を売る無防備な行為が、子どもたちを性的搾取という危険に陥れる。こうした子どもたちが麻薬取引や犯罪活動といった不法行為に巻き込まれ、(もしくは)自ら犯罪に手を染めてしまう危険性を軽視することはできない」と話す。
カンボジア政府、雇用主と従業者による組織、地方のNGOらや市民社会団体は、国内のあらゆる種類の児童労働に対して闘っているILOの児童労働撲滅国際計画(IPEC)とともに活動している。ILOはとりわけアンコール遺跡群とプノンペンの川沿い地域における路上での物売り、ストリートチルドレンや観光客相手に商品を売る子どもたちに焦点を当てている。
これまでに4000人を超える児童労働を止めさせ、学校教育・ノンフォーマル教育(NGOによる教育)や職業訓練を受けられるようにしている。一方、子どもたちの家族にも収入獲得のための支援や職業訓練の提供をし、自助グループや小事業立ち上げを支援するマイクロファイナンス機関を紹介している。
主な取り組みのひとつは、これらの家庭に対して児童労働の代替となる収入機会を提供することだ。
カンボジアの路上にいる子どもたちを救いたいと思っている人は、問題を見誤らないことだ。シン氏の説明どおり「旅行者は大人から商品を買い、子どもからの購入は避けること。そうすることで、大人の雇用が促進される。言い換えるならば、親には稼がせ、子どもには学ばせることだ。」
(多田衣美子・訳 2011年3月2日)