お知らせ

人身売買・児童労働防止ネットワークを学校で結成!

カンボジアだより

2011年01月17日

 

こんにちは。カンボジア駐在スタッフの長島です。シーライツとHCCはスバイリエン州で子どもの人身売買・児童労働防止プロジェクトを行っています。プロジェクトの活動のひとつに、地域の人たちに子どもの権利や人身売買などについて伝える、啓発活動があります。その活動の担い手となるのが、プロジェクトのために結成される小中学生の子どもたちと先生からなるSBPNSchool Based Prevention Network)、と村長、警察官、校長先生などの地域のリーダーとキーパーソンたちからなるCBPNCommunity Based Prevention Network)です。

 

 

 

 SBPNはひとつの学校に生徒10名、先生2名で構成されています。今年度は新しい事業地で10校のSBPNが結成されました。先月、そのうちのひとつの中学校の研修に代表の甲斐田とともに参加してきました。研修ではHCCのトレーナーが、中学生(15歳から17歳)の男子5名、女子5名と先生2名に、子どもの権利、人身売買、児童労働、安全な出稼ぎなどについて教えました。

 

 


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SBPNメンバーへの研修のようす

 

 研修前に、メンバーへ事前テストを行って子どもの権利などのトピックについてどのくらい理解しているかをみます。質問内容は以下のようなものがあります。

 

■人身売買について聞いたことがありますか?

 

 (聞いたことがある人は)どこから聞きましたか?

 1.NGO2. 地域のリーダー、3. 親、4. 友達、5. 先生、6. ラジオ、7. TV,8覚えていない

 

 ■児童労働とは何ですか?

 

 1. 家のお手伝い、2. 勉強せずに、田畑で働くこと、3. 勉強せずに、縫製工場で働く/日雇いの仕事をすること、4. 分からない

 

 ■人身売買ブローカーがよく使うだまし手口は?

 

 1.架空の仕事の紹介、2.  架空の結婚の紹介、3 .お金でつる、4. 友達や恋人になり近づく、5. 分からない

 

 カンボジアの学校では9年生(中学校3年生)から子どもの権利について教えていますが、研修に参加したSBPNメンバーたちは、小学生の時に先生から聞いたり、テレビやラジオで聞いて既に知っている子がほとんどでした。

  


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積極的に発言するSBPNメンバーたち(右奥の女性は先生)

 

午前中は、子どもの権利について勉強した後に、いくつかのグループに分かれて、「なぜ子どもには権利が必要か?」、「児童労働にはどのようなものがあるか?」を話し合ってもらいました。

 

 


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グループディスカッションのようす(奥の男性は先生)

 

話し合いの後の発表のなかで、メンバーたちは児童労働と、児童労働とみなされない家の手伝いの違いについて混乱していたようなので、HCCのトレーナーが例をあげながら説明しました。子どもにはなぜ権利が必要かは、みな良く理解していました。

 


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話し合った内容をはきはきと発表する姿が印象的だった二人。左の少女は後に投票でグループリーダーに選ばれました。

 


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HCC作成の児童労働を表すピクチャーカード。啓発活動を行う際に使います。

 

ディスカッションの時に驚きの意見がでてきました。甲斐田が、自分の人生や生活にかかわることすべてのことに対して、意見を言ってもいいという権利があることを説明したときのことです。

両親に無理やり60歳の男性と結婚させられた近所の18歳の子を知っている、というメンバーがいました。その強制結婚させられた子の実家は、後にいい家に建て替えられたそうです。そして、メンバーたちは、「親が決めた結婚相手と結婚するすしかない。親の言うことを聞かないということは、他に自殺するしか選択肢がない。自分たちに権利があることは分かっているが、主張するのは難しい。」と口をそろえて言っていたのです。カンボジア社会の現実と、子どもだけでなく親へのエンパワーメントへの重要性を痛感しました。おとなのネットワークCBPNSBPNと同様、地域のおとなに子どもの権利が守られる社会の大切さについて伝えていくので、活動の効果で少しずつおとなの意識も変わっていくといいなと思いました。

 

午後は、児童労働の種類、DV、人身売買とだましの手口、子どもの権利条約など盛りだくさんのトピックを教えて終わりました。

 

 

後日、研修を受けたSBPNメンバーたちにインタビューをさせてもらいました。研修のなかで何を最も学んだか、何に興味を持ったか、内容は難しかったか、時間は十分だったかなどのフィードバックをメンバーからもらい、今後の活動について話し合いをしました。

 

 


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 SBPNメンバーたちへのインタビューのようす。右手前はHCCスタッフ、奥左と右がシーライツスタッフ。

 

  印象に残ったのが、「権利を主張して、たたかれたらどうすればいいの?」という質問です。甲斐田が、「もし親が学校をやめて働けと言ったら、みなさんは『自分には教育を受ける権利がある』と主張することができるのです。それが権利を使うということです」と説明したあとに子どもたちから尋ねられたのです。甲斐田が「先生や村長さん、ネットワークメンバーに相談するといい」と答えると、質問をしたメンバーはうなずいていました。

 

 また、地域での性的虐待が発生した時どうするか話している時、「犯人におどされたらどうしようもない。」という意見や、「犯罪者が権力者だったらどうするの?」という質問がありました。HCCスタッフが、「犯罪者が平等に裁かれないのは、社会がそうさせているんだよ。犯罪者は目撃者を黙らせるためにおどすけど、みんなも勇気を持って報告できるといい。」と説明します。犯罪者に立ち向かうこと、ましてやそれが権力者だと、確かに身に危険が生じます。でも権力者からだからといって、罪から逃れられる社会をみんなで変えていかなければいけません。

 

一人で立ち上がるのは難しいけど、CBPNメンバーには村長や警察官などもいるので、おとなメンバーと連携すればいいということを知ると、徐々にメンバーに活動のイメージがわいてきたようです。研修の途中では、親の言うことは聞き入れるしかない、と言っていた子たちが最後は活動することに自信が持てたようすで、とても頼もしく感じました。

 

 


DSCN9419.JPG啓発活動に使う人身売買についてのポスター。家の前に貼ってあるのを見つけました。

子どもの権利についての研修や人身売買・児童労働に関する子ども向けの啓発に必要な文房具を配布することができます。

童話や物語の本を5冊購入し、本が傷まないように補強してから図書室に届けることができます。

村の清掃と衛生について学ぶ「ゴミ拾いキャンペーン」を1回開催することができます。