カンボジアだより
2010年12月6日
シーライツとパートナーNGOであるHCCが行っている子どもの人身売買・児童労働防止プロジェクトでは、人身売買から子どもたちを守るための啓発活動の一環として、「安全な出稼ぎ」という冊子を配って、出稼ぎ先でだまされて人身売買や労働搾取・性的搾取の被害にあわないように働きかけをしています。そのなかで、出稼ぎに行く前に確認しておくべきことのひとつとして、働く先、滞在先の明確な情報を事前に入手しておこくと、それを本人と家族に加え、村長などの地域のリーダーが共有していることの重要性を伝えています。ところが、人びとが信用するであろう政府が認可している人材派遣会社が、就労年齢(18歳)に満たない少女たちを雇用するだけでなく、海外に出稼ぎに出るために研修を受けている少女や女性に対し、搾取的な扱いをしていたという、驚きの報道がありましたのでご紹介します。
カンボジアからタイの漁船に売られるなどの人身売買の被害にあっている少年や男性もいるなか、依然として人身売買・性的搾取の被害者の多くは少女や女性のため、シーライツは、少女が学校に通い続け、人身売買の被害にあわないように支援を行っています。
就労年齢未満の少女たち、労働施設の一斉検挙で救出される
プノンペン・ポスト紙 2010年7月22日
モム・クンティアー記者
写真はVCM社の研修施設cPhnom Penh Post
政府公認の人材派遣会社2社で就労年齢の18歳未満(1) と見られる31名の少女が発見され、両社が海外派遣のための研修中の女性たちに不衛生な生活を強要し、外出を許さなかった疑いがあると当局が発表した。
そのうちの1社、VC Manpower Co社(以下、VCM社)で研修中に亡くなったユン・マブさん(21歳)の父親リアム・ヴィさんは、娘の突然死は劣悪な生活環境によるものだと話している。労働省ニエム・キムホイ担当官はラジオ放送で、VCM社が運営するセン・ソック地区の施設で就労年齢に満たない少女24名が発見され、Champa Manpower Group(以下、CMG社)に対する強制捜査でも7名の少女が見つかったと発表。
VCM社は、カンボジア人を訓練してマレーシアに家事使用人として派遣する業務について政府から認可を受けている。ニエム氏によれば、同社の責任者はなぜ就労年齢に満たない従業員が雇われていたのか把握しておらず、彼らの年齢を再度書類で確認したと話しているという。
両社の担当者からのコメントは現時点では得られていない。
カンボジア人労働者の海外出稼ぎは1995年の閣僚会議令で認められているが、就労予定者は18歳以上でなければならない。
ニエム氏によれば、31名の少女はプノンペン市の人身売買対策警察に送られ、年齢の確認を受けているという。労働省は両社に対し、施設の環境改善を提示できるまで新規採用を停止するよう命じたと同氏は話した。
ルッセイ・ケオ地区局は、CMG社の運営する3か所の施設で生活していた合計232名の女性と少女のうち数名を不当に拘束していたとして、同社を告訴した。また、VCM社の研修施設の2階から飛び降りて脱走を図った女性は、同社が外出を認めてくれなかったと話した。
シェムリアップに住むリアムさんは、娘は脱走を試みた女性と同じ施設で拘束されたまま亡くなったと話した。
「娘は十分な食事を与えられずひどい環境で生活していたために亡くなったのではないかと思っている」とリアムさんは話しているが、人身売買対策・青少年保護局のケオ・ティア氏は、ユンさんは、リアムさんの娘は医師の診察を受けていないものの、白血病で亡くなった可能性が高いとしている。
【追記】
9月10日付プノンペン・ポスト紙によると、VCM社は女性(ヴァン・シヌーンさん)が飛び降りてケガをした施設を突然閉鎖し、この施設で生活していた研修生を収容面積の広い本社施設に移している。
また、ヴァンさんは脱走を試みた背景について「家族に会いたくて外出を希望したが、書類作成の費用として800ドルを支払わなければ認めないと言われた」と話している。
(ニューヨーク翻訳グループ 2010年10月19日)
(1) 海外派遣の就労年齢は18歳以上に対し、国内での就労年齢は15歳以上。