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2021年06月22日
こんにちは!
シーライツインターンの福田利紗と土田向夏花です。
今回は5月31日に行われた第5回チャイルドライツ・カフェ「なぜ『子ども基本法』は必要か」の内容をご報告します。
今回の記事は、前半を福田、後半を土田で分担してご報告いたします。
↑イベント当日の様子です!
開催日:2021年5月31日(月)
実施方法:オンライン
参加人数:49名
講師:<講師プロフィール>
■小川 玲子:
NPO法人国際子ども権利センター(C-Rights)理事。国際協力の仕事を経て、千葉大学教員。千葉大学移民難民スタディーズ代表、千葉市男女共同参画審議会委員、元JICAジェンダー主流化研修講師(2006~2017)。共編著に『Gender, Care and Migration in East Asia』(Palgrave Macmillan, 2018)、共著に『Routledge Handbook of East Asian Gender Studies』(2020)、『SDGsを学ぶ 国際開発・国際協力入門』(法律文化社、2018)、論文に“Use and Abuse of Trafficking Discourse in Japan”(Journal of Population and Social Studies, 2020)、「東アジアにおけるケア労働者の構築」(『社会学評論』、2019)など。
■甲斐田 万智子:
NPO法人国際子ども権利センター(C-Rights)代表理事。文京学院大学教員。広げよう!子どもの権利条約キャンペーン共同代表。編著『世界中の子どもの権利をまもる30の方法』(合同出版)、共著『SDGsと開発教育 持続可能な開発目標のための学び』(学文社)、共編著『小さな民のグローバル学:共生の思想と実践を求めて』(上智大学出版)共著『対人援助のためのコミュニケーション学:実践を通じた学際的アプローチ』(文京学院大学総合研究所)ほか。
活動内容の報告の先に、福田と土田の感想を述べさせていただきます。
法律ができて権利の観点が基盤になることで、教育の場、子どもに直接関わっている人の関わり方、社会の子どもの見方が子どもをより当たり前に一人の人間として向き合っていくように変わることができるのだろうと感じました。このような動きがあることを知り、普段から子どもと関わっていく中で、子どもの考えや行動を軽視しないで対等な目線で向き合っていきたいと改めて思いました。(福田)
対談後、参加者の方々から、子ども基本法や子どもの権利への理解が深まったというご意見を多くいただきました。啓発活動の重要性を認識した反面、社会の隅々にまで十分に浸透するには時間を要することにも気づきました。よって、子ども基本法の成立とそれに伴う体系作りは、「待ったなし」の課題であると感じました。(土田)
子ども基本法をつくる背景
・日本において子どもの権利が守られていないケースが多々ある。
・日本には子どもの権利に関する基本法がない。(子どもの権利をうたった法律は増えているが、それらは主に子どもの保護や育成を目的とした法律であり、子どもの権利を実現するための基本方針や必要な政策を定めたものではない。)
・広げよう!子どもの権利条約キャンペーンにおいて、実際に子どもたちから、法律や政策、条例などのつくり方を変え、子どもの権利が守られる社会をつくることを求める声があった。
・子ども自身が声を上げられていないことに気づけるように、おとなの子どもの権利の認識(子ども最善の利益は子どもの声から・子どもの未来のためにではなく、「子どもの今」を大切にする)を深めていく必要がある。そのためには、子どもの権利を知らせ・学ぶ仕組みや、子どもの声を専門に聴く子どもコミッショナーや担当部署(庁)をつくること。そして、それらの仕組みのためには、予算が必要でそれらを確実に整備するために基本法が必要である。
↓
子ども基本法によって、子どもが今を生きる当事者として声を上げることがあたりまえの社会にしよう。
子ども基本法(案)の構成
1、理念と責務
子どもを権利の主体として捉え、子どもの権利条約の一般原則である、生命・生存・発達への権利、子どもの意見の尊重、子どもの最善の利益の確保、あらゆる差別の禁止などの子どもの諸権利を社会全体で遵守する必要性を明記する。国および地方公共団体の責務を明記。
2、基本的施策
子どもの権利を守るための国の基本的施策として、年間計画を定めること、内閣府に「子ども総合政策本部(仮称)」を設置し、前述の年間計画について行政内から総合的な調整を目指す。
3、子どもコミッショナー(仮称)の設置
子どもの権利や利益が守られているか、行政から独立した立場で調査し、勧告をすることができる子どもコミッショナーを設置する。
甲斐田代表と小川理事の対談、そして参加者の方々との質疑応答では、沢山の意見飛び交いました。活動報告では、その一部を抜粋してお伝えします。
親の暴力や虐待
子どもは、家族や学校、地域といった社会の中で生きています。一方で、子どもを社会全体で育てる体制は十分とは言えません。特に小川理事は、保護者の暴力が「親のモラルの低さ」に集約される傾向を危惧しているそうです。では、保護者の虐待は個人の責任なのでしょうか?
実は、子ども権利実現には、保護者のエンパワーメントも重要な課題です。例えば、収入が安定したことで、アルコール依存に依存しなくなり、虐待が軽減されたケースもあります。したがって、親の責任を問う前に、保護者のエンパワーメントが「社会の責任」であることを認識する必要があるのです。
子ども基本法の成立が、学校現場に与える影響
小川理事によると、「何か自分の意見を言うと教師に否定されてきた経験のある学生がいる」そうです。つまり、教育現場においても尚、子どもの発言権が軽視される場合があるのです。では、法律は現場にどのような影響を与え得るのでしょうか。
この質問に対し、甲斐田代表が指摘したのは、カリキュラムの改正です。子ども基本法が採択・施行されれば、当然、教員養成のカリキュラムも再編成を迫られます。そして、新たな教育過程を経た教員が、既存の慣習に違和感覚え始めることで、「子どもの権利」に即した教育のあり方の模索に繋がるのです。
また、子ども基本法が採択され、子どもが自身のもつ権利を自覚していくと、子どもは、差別をしている教員を批判する力を身につけると甲斐田代表は話しました。「特に、子ども自身の信頼を得たオンブズマンや、権利を訴えられる機関の確立は重要。日頃から接点のある子どもとおとなだけの教室や家庭は、言わば「密室」で、権利侵害が発生・継続しやすい」そうです。よって、第三者の介入には、「風通し良くする効果」が期待されるのです。
子どもとの向き合い方
甲斐田代表によると、ある児童相談所では、約束の守れない子どもに壁に向かって一人でご飯を食べるよう指示する「罰則」があったそうです。皆さんも、明らかな体罰でなくとも、おとなにはしないことを子どもにしてしまった経験ありませんか?甲斐田代表は、強制的に子どもをコントロールしようとする背景には、傾聴不足があると指摘します。「子どもはきちんと言葉で伝えれば大切なことは理解できる。」というのが、甲斐田代表と小川理事の共通認識。おとなと子どもの間にある意識や経験の違いを受け入れ、「対等な関係」を築くことが大切なのです。
また、「対等な関係」とは、子どもの意見を全て受け入れることではありません。正直な「おとなの意見」は、子どもの視野を広げます。ただ、「間違えること」も子どもの大切な学びの一つなのです。「どうせ子どもには分からない。」と決めつける前に、きちんと情報提供をし、子どもを信頼することが重要になります。
時間内に回答できなかった質問について、簡単に回答します。
川崎市で子どもの権利に関する条例ができた背景とその影響
①暴行事件への対応
・1980年:「金属バット殺人事件」
・1986年:6500件の意見を基に「いきいきとした川崎の教育をめざして」制定
・1987年:特別支援学級での体罰死亡事件
→学校教育の基盤を人権尊重教育に置くことが宣言
・1994年:「川崎市人権尊重教育推進会議」発足
②外国人児童への対応
・1984年:在日多住地域の小中3校で「人権教育」開始
・1986年:「川崎市外国人基本教育方針」(略称)制定
・1996年:「川崎市外国人市民代表者会議」設置
・1998年:「川崎市外国人基本教育方針」改正
⇩
2000年:「川崎市子どもの権利に関する条例」制定
条例化することの意義(甲斐田代表より)
・従来:子どもに意見を言う機会はあったが、十分な予算がつかず、実現できなかった。
・条例制定後:予算が割り当てられたことで、子どもの意見が実際に反映されるケースも。
→本来的な意味で子どもの参加権の実現。
・ただし、条例化後も虐待などが発生。全ての世代での「子どもの権利」の浸透は、これからも課題となる。
参照:「設立趣意書」「2018かわさき子どもの権利フォーラム」
http://kawasakifrc.ict-jig.com/aims.html
(閲覧日2021年6月14日)
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