お知らせ
2009年10月7日
初めてこのブログへ寄稿してから早3年。大阪事務所ではカンボジアに関する学習会が何回か開催された。内容としては、理事等による支援先NGOの現状報告やワークショップが多かったようである。また、「子どもの権利」を中心に児童労働や教育、ジェンダー等をテーマに取り上げ、専門家を招いての講演も何回かあった。いずれも安価な参加費にもかかわらず充実した内容で、コストパフォーマンスの高い学習会であったと自負(自画自賛?)している。
3年間を振り返って最近特に感じることは、カンボジアに対する人々の関心の高まりである。人身売買や児童買春、地雷等カンボジアに関する情報が増えるに従い、実際に現地を訪問し、自分の目で現状を確かめ、更には何ができるか模索したいと考える人が多くなってきたように思われる。それに応じて、学習会でも参加者の熱気を感じることが多くなった。
その中で、9月23日に開催された報告会――カンボジアの子どもたちって?! ~わたしたちの見たカンボジアの子どもたち~――は少々毛色の変わったイベントであった。取分け目新しかったのが、支援先NGOを含め各種施設を訪問した3人の大学生が、その体験(見て感じて学んだこと)を自分の言葉で語ったことである。例を挙げると・・・・、
・学校生活を明るく送るカンボジア日本友好学園(プレイベン州)の生徒たち。
・貧困のため退学せざるを得ない生徒に対し、何かできることはないか(日本に招いて教育を受けさせたい)とのやるせない気持ち。
・「未来に夢を持たせるだけでも意義がある」と語る理事長の言葉に、日本とのギャップを痛感。
・HCCグッディーセンターで気分が悪くなった時、気遣ってくれた少女に感じた優しさと、人の輪に入らず後方で震えていた少女への悲しみ。
・ツールスレン虐殺博物館やキリングフィールドで受けた衝撃。
実際に現地を訪問し、言わば血の通った研修を体験した学生たちにとって、これまで書物や映像(画像)等を通じて得られた数々の情報は、今一つ物足りなく感じられたことであろう。正に「百聞は一見に如かず」である。また、それを感じさせる報告でもあった。
「熱弁を振るう学生と傾聴する参加者」
参加者との質疑応答では、「経済的な理由のために子どもの教育を打ち切ったり、最悪の場合、親が子どもを売ったりできるのか」が焦点となった。後者はさておき前者については、「極度の貧しさを考えると、子どもを学校に行かせず働かせる行為を一概に責めることはできない」と感じた参加者(学生も含め)が多かったのではないだろうか。無論、児童労働を肯定するつもりはないし、あくまで撤廃が目標であることに変わりはない。しかし、「以前は学校すら通えなかった子どもが、今はたとえ短期間でも学校生活が送れるようになった(夢が実現した)。このことだけでも非常に大きな価値がある」と述べた友好学園理事長の言葉が印象に残ったのは、筆者だけではないような気がする。
後者については、先般話題になった映画「闇の子供たち」を思い出した。映画には家電製品やバイクを購入するため、ほとんど何のためらいもなく子どもを売る親や、子どもを商品としか見なさないブローカーたちが登場する。彼らの行為が言語道断の犯罪であることは言うまでもない。しかし、貧しさが極限に達した場合、親が子を売ったり、子が家族のために働いたりできるものなのか。そして、それが「最悪の形態の児童労働」であれば・・・・。残念ながら、今回の報告会では時間が足りず、この点に関して踏み込んだ意見交換までには至らなかった。なお、「大阪事務所だより」(09年3月21日、http://www.c-rights.org/2009/03/post-37.html)に掲載された「映画『闇の子供たち』を観て」では、寄稿者が買春を行う人間の行為を深く省察しているので、どうぞ御覧下さい。
総じて今回の報告会では、学生の心情がその飾らない語り口から参加者全員へストレートに伝わったように感じられた。そして、参加者(会員、マンスリーサポーター、大学生、一般等計10名)の多くが彼らの言葉を良く理解することができたのではないかと思われる。時間があれば、膝をつき合わせてもっとじっくり語り合いたいところではあったが。
ところで、日本では先日行われた衆院選の結果を受け、久し振りに政権交代が実現した。しかし、今後果たして「子どもの権利」の拡充が十分図られるのだろうか。各政党のマニフェストでは、子育て支援や保育、学校教育の見直し、虐待防止等、子ども関係の政策がいくつか取り上げられていた。我々は、これらの政策が選挙向けのアドバルーンに終わらぬよう、絶えず注意深く見守る必要がある。また、諸施策が真に「子どもの権利」に則ったものか、つぶさに検討しなければならない。
翻って、インドでは第14回下院選挙(04年実施)に際し、「デリー子ども権利クラブ」が各政党のリーダーたちへ手紙を送った。来夏の参院選では、是非子どもの声を各候補者へ届けたいものである。その前に、そもそも子どもたちに子どものための政策を呼び掛ける候補者がいるのやら?
註:手紙の内容については「子夢子明バックナンバーから」(05年第52、53号、http://www.c-rights.org/shiryou/komukome/komukome52-2.html、http://www.c-rights.org/shiryou/komukome/komukome53_1.html)を御覧下さい。
浪速の翻訳士
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