お知らせ
2009年10月29日
8月23日に大阪事務所で内部学習会を開きました。内容は、エイズの一般的な知識と、カンボジアでのエイズ感染の状況についてでした。
発表者は、大阪事務所でボランティアとして活動している前嶋さんでした。今回はスタッフ、ボランティアの内部学習会でしたが、以前にもイベントに参加してくださった方も来て下さいました。
今回のブログでは前嶋さんの学習会発表の中から、カンボジアでのエイズの現状と、シーライツの支援団体のエイズの取り組みについてお話したいと思います。
発表はまず、AIDSとHIVの言葉の違いの説明から始まりました。そして、エイズ自体ではなく、エイズによって引き起こされる病気になって最終的に死に至るなど、知っていそうで知らない基本的な知識が伝えられました。
カンボジアでのエイズ感染の傾向についてでは、地図を見て、どの地域での事かを確認しながら話を進めて、よりわかりやすく頭に入ってきました。感染拡大の一因としては、移民や出稼ぎ労働者などの人口移動があり、高いエイズ感染率はカンボジア西部とカンボジア中部に見られます。カンボジア西部で感染率が高いのは移住者が多いタイ国境周辺であるためであり、カンボジア中部で高いのは南のベトナム国境周辺であることと川沿いであるためということがわかりました。
また、他の要因としては国内の性産業の需要があります。カンボジアのことわざで「10本の川では海を満たすには不十分である」というのがあり、男性の性的欲求を認める傾向があって、カンボジア男性の70%が性産業の経験者とも言われています。
しかし、何よりもジェンダーとして女性規範、「夫が怒ったらそれ以上何か言ってはいけない」や「娘が家族のために尽くすのは義務」など女性のあるべき姿についての社会的価値観が、コンドーム不使用や人身売買、そしてエイズ感染拡大を招く原因のひとつで、女性や子どもを社会で守る仕組みがないことや対策が十分になされていないことが大きな問題です。
カンボジア政府は、エイズ対策法によってエイズ問題に取り組んでおり、また各省庁によってもエイズ予防や感染者への公的サービスの対策をしています。しかし、各省庁の対応は対象者が限られていたり、公的サービスへのアクセス障害(物理的:医療機関までの交通不便、社会文化的:民間療法重視など)があったり、なかなか一般の人まで対応できないのが現実です。そのためNGOや地域組織の取り組みが必要不可欠になっています。
シーライツの支援団体であるAFESIPは、エイズの正しい知識の普及と自己啓発の促進を買春地域で定期的に行ったり、性産業から救出された女性、少女たちや、性産業で働いていたエイズ感染者や患者の治療・心身のケアを行っています。その他無料の身体検査や、買春地域でのコンドームの配布などサービスもしており、毎月平均83人もの少女や女性がAFESIPのクリニックを利用しています。
他の支援団体であるHCCは、性産業への人身売買の防止からエイズ感染拡大に取り組んでいます。これは新たな感染者を減らし、感染の拡大を抑えることを目的としています。この取り組みの方法としては、人身売買防止ネットワークをつくり、地域や学校でワークショップを行い、人身売買の問題や手口、性的搾取やエイズ、また子どもの権利条約やジェンダーの役割についてトレーニングしています。その参加者が次にネットワークの担い手として、意識啓発活動やトレーニングを日常の場で行うことで、どんどん人身売買防止ネットワークを広げていく手法です。この取り組みの特徴は、地域で村のキーパーソンや有力者の理解を得ることで、大人にも知識の普及を促せることと、学校で子どもたちがネットワークの担い手となることで、学校に通うことができない子どもたちにも、人身売買を未然に防ぐ知識を伝えていくことができることにあります。
発表の後の話し合いでは、エイズ問題から人権問題へと話が広がり、社会的な女性・子ども軽視からくる人権に反する行為が大きな問題だとなりました。参加者の方からは、政府とNGOの取り組みについて、現在、対個人にはNGOが対応している面が多いが、政府も何か行動を起こすべき。それにNGOの働きかけが必要であるなら、ODAをNGOに使うなどの必要がある。政府とNGOの結びつきを考えないといけない。という意見が出ました。
これからも大阪事務所は、カンボジア、インドのみではなく、日本の子どもの置かれている状況についても子どもの権利条約を踏まえながら考えていきたいと思います。みなさんも何か疑問に思っていることや、一緒に考えたい事柄などがありましたら、是非大阪事務所までご連絡ください。学習会や、新しいイベントを一緒に作ってみませんか?
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文責:アジジ暁子
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