お知らせ
2020年05月14日
新型コロナウイルス感染拡大の影響下にある子どもたちに対するシーライツの基本方針
シーライツは、これまでカンボジアやインドで最も困難な状況下にある子どもたちへの支援活動を行ってきました。また、子どもの性的搾取、人身売買、体罰など子どもに対する暴力を撤廃するための活動においても国内外で力を尽くしてきました。そのために子どもの権利や子どもの権利条約を子どもとおとなの両方に普及するよう努めてきました。
新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛により、もともと親から虐待を受けていた子どもたちが家で親と一緒にいることにより、さらに虐待を受けるリスクが高まっています。
また、インターネットを通じて人とつながろうとしたり、情報にアクセスしようとすることが増えた子どもたちが、ネット上でいじめや暴言を受けたり、性的搾取の被害に遭うリスクが高まっています。
さらに、オンライン学習の導入により、貧困下にある子ども、移民や難民の子どもたちが教育を受けられなくなるなど、もともと存在していた教育格差やその他の不平等が強まる危険性があります。
このような状況を鑑み、シーライツは、以下の項目に重点を置き、関連する団体と連携しながら、当事者の子どもや親に情報を提供するとともに、政策決定者やメディアに対して、子どもの権利が守られるよう、はたらきかけていきます。
また同時に、これらの活動においては、シーライツの職員、ボランティア、ユースメンバーの安全を第一に配慮します。
1.子どもが直面する様々なリスクへ注意喚起する
コロナウイルス感染拡大と外出自粛によるリスクに関しての情報を発信し、子どもと親に対して注意喚起を呼びかけます。特にオンライン上の性的搾取のリスクについて広報します。
2.子どもの声を聴き、発信する
そうした経験を活かし、子どもがコロナウイルス感染拡大による影響をどのように感じているかについての声を聴き、その声を社会に発信するようにします。特に、LGBTQの子ども、外国につながる子ども、不登校の子どもなど、マイノリティの子どもたちの声を聴くことに努めます。
また、特に最近日本に移住した家族や難民の子どもたちなど、困難な状況にある子どもたちがコロナ禍の影響により、不安定な収入がさらに減り経済的に困窮しています。そうした子どもたちが、差別を受けず、経済状況やオンライン環境・言葉の壁について十分な配慮がなされ、教育の機会が確保できるように自治体にはたらきかけます。
シーライツは、カンボジアなどの子どもたちに自分の権利を侵害されたときに親や村の住民に対して、意見を表明する権利があることを伝えてきた結果、子どもたちが児童労働や危ない出稼ぎをしなくてもすんだり、親からひどい言葉を投げつけられなくなりました。
3.子どもを守り、親を支援するための情報を発信
(1)虐待や搾取から身を守るための情報
休校が長引き、家にも居場所がない子どもが街頭で性的搾取の被害に遭わないように情報を発信します。また、家で親や家族から様々な暴力を受けている子どもたちに相談できる窓口を紹介します。外出自粛のなか、コロナ離婚といわれるほど、親同士が争いをするケースが増えており、面前DVの被害に遭うリスクも高まっています。そのようなときに子どもが避難先などを相談できるような情報を提供します。
(2)イライラしない子育てのヒント
閉じられた空間で子どもが騒がしくしたり、親の望むような態度をとらないとき、イライラを解消する子育てのヒントをオンライン講座などを通じて親に提供します。
(3)しんどい状況に追い込まれた家庭への情報提供
シングルマザーなど、低所得世帯の収入がさらに減り、十分な食事を提供することができない上、休校で給食にアクセスできないため、子どもの栄養や精神状態がリスクにさらされています。そうした親が孤立しないよう、支援の輪に入れるような情報提供をしていきます。
4.子どもの権利をまもるための活動や仕組みが後退しないようにする
新型コロナウイルスによる社会影響以前に取り組まれていた、子どもの権利をまもるための活動や仕組みが、今回のことで弱体化されないように注意喚起します。緊急事態において厳しい状況があるにせよ、「仕方ない」と判断され、なおざりにされないようにします。取り組むことが困難な状況の中でも、これまで同様に子どもの権利が保障されるための努力が引き続き配慮されるように声を挙げていきます。
5.子どもたちの困難な状況、および、権利侵害が悪化・不可視化されないようにする
新型コロナウイルスによる社会影響以前にも社会で見過ごされがちであった子どもたちの困難な状況や権利侵害が、さらに悪化したり、不可視化されないようにできることを模索していきます。特に、経済的・社会的・文化的に権利が侵害されやすい子どもたちが格差によって教育を受ける権利が侵害されないように配慮するよう行政にはたらきかけます。たとえば、パソコンやスマートフォンなどをもっておらず、オンラインにアクセスできない子どもとその権利侵害や教育格差がさらに不可視化されかねない状況に注意喚起していきます。
これらの活動を実施できるよう、皆様のご理解ご支援をお待ちしています。
なお、事務所はスタッフの安全に配慮してテレワークで仕事をすることが多いため、恐れ入りますが、メールでのご連絡をお願いいたします。
参考資料
国際子ども権利センター・甲斐田万智子編『世界中の子どもの権利をまもる30の方法』(合同出版)
参考ウェブサイト
「国連子どもの権利委員会:新型コロナ感染症(COVID-19)に関する声明」
「国連人権高等弁務官事務所 COVID-19 ガイダンス」
いずれも以下の平野裕二さんの子どもの権利・国際情報サイトより
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/330.html
「共同声明 子どもに対する暴力:COVID19の世界的大流行に隠された危機」
https://www.unicef.or.jp/news/2020/0077.html
「人道行動における子ども保護のガイダンスノート」
以下は、直接子どもの権利にかかわるものではありませんが、子どもへの暴力など子どもにもかかわる状況や対策について触れている文書です。
国際連合「政策概要:新型コロナウイルスの女性への影響」
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/pdf/20200427_1.pdf
国連移住ネットワーク 入管収容代替措置に関するワーキンググループ「COVID19と入管収容:政府とほかのステークホルダーは何ができるか?」
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/international/covid19/05.pdf
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)への日本の国際保健政策に関する日本の保健分野市民社会の提言
カナダの首相は、テレビ番組でコロナウイルスについて子どもの質問に答えています。
その他の国連諸機関のメッセージや日本の市民社会からの提言などは、ヒューライツ大阪の以下のページをご覧ください。
https://www.hurights.or.jp/japan/news2/2020/04/post.html
なお、子どもや親、周囲の人が相談できる窓口のリストはこちらにて随時更新中です。
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